2011年8月21日日曜日

政府機能、大災害時に西日本で補完 代替オフィス設置

政府機能、大災害時に西日本で補完 代替オフィス設置

2011/8/21 6:55
 首都直下地震などの大災害に備え、政府は行政機能を西日本で補完できる体制を整える。首都圏で大災害が起きて中央省庁などの機能がマヒした場合、西日本地域に設ける補完オフィスが行政を代替できるようにする。東日本大震災をきっかけに、首都圏以外の地域で行政機能を補完する必要性が高まっていることに対応する。第3次補正予算で調査費を計上し、来年度中に主要省庁が新体制に向けた具体的な準備に入る。
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 中長期の国土計画を担当する国土交通省が、今秋に編成する第3次補正予算でまず調査費として数千万円を要求する。9月をメドに有識者らで構成する委員会を発足させて、今年度中に行政機能の補完に関する報告書をまとめる。
 国交省や財務省、総務省などは2012年度中に省庁間の検討会議を設け、具体的な行政機能の補完事業に着手する。体制整備のための法整備なども視野に入れている。
 補完の対象は外交、防衛、警察、経済政策を担当する中央省庁などの行政機能。それぞれが西日本に補完オフィスを設け、緊急時に機能を代替できるようにする。補完オフィスの設置場所は地盤の強さや、地震などの災害リスク、交通の利便性を勘案して決める。大阪や名古屋、福岡が候補に挙がっている。
 西日本に設けるオフィスにはテレビ会議などができる部屋や、緊急時に必要な人員を配置。人工衛星を使って災害時でも通信障害が起きにくいようにした衛星電話も設ける。各省庁が行政機能の継続に必要な情報を蓄積できるデータセンターや情報システムを整える。
 日本の行政組織は首都圏全体がマヒするような広域災害を想定したバックアップ体制は整えていない。中央省庁が持つ補完施設もほとんどが東京都内にある。首都圏で大災害が発生した場合、日本全体の経済活動が混乱に陥る可能性があるため、政府は行政機能の補完体制を強化する必要があると判断した。
 東京一極集中を是正するために国会や行政機能を東京以外に移転する「首都機能移転」が議論されたことがあるが、実現には10兆円を超える巨額の費用が必要であることや景気低迷の長期化で議論は停滞している。政府は行政機能のバックアップ体制の整備なら事業費が比較的少なくて済むと判断し、本格化な検討に入る考えだ。
 省庁や企業の中枢機能の多くは東京都や埼玉、千葉、神奈川県に置かれている。国交省の調べによると、中央省庁はほぼすべてが、大企業の本社や本店も6割以上が東京周辺に集中している。