「秘孔(ひこう)」って本当にあるの?
2011.07.25
北斗神拳といえば、なんといっても「経絡秘孔」。ケンシロウが経絡秘孔をひと突きすると、敵の頭や胴体が破裂するという、スペクタクルなシーンはとても印象深い。
けど、この経絡秘孔っていったい何だろう。体が破裂することはあり得ないにしても、現実にこうしたピンポイントな急所が人体には存在するのだろうか? 池袋スカイクリニックの須田隆興先生に、大真面目に聞いてみた。
「結論からいえば、これはやはりフィクションでしょうね。医学系の文献にも、『秘孔』という言葉は見当たりません。一方、『経絡』というのは漢方の世界で想定される、全身を巡る脈のこと。経絡は経脈と絡脈に分類され、経脈は内臓に、絡脈は皮膚や筋肉など表層部分につながり、気や血液の通り道になっていると考えられています。この経絡から鍼灸の刺激を伝達することで、内臓の変調を調整する作用がある、というのが漢方の考え方のようです」
経絡秘孔の正体を探るカギは漢方、つまり東洋医学にあった。『北斗の拳』は荒廃した世紀末の物語だが、そういえばどことなく東洋的な要素を感じなくもない。
その東洋医学には、もともとツボ(経穴)という概念がある。これも経絡秘孔のモデルといえそうだが、近代医学ではツボについてどう考えられているのだろう?
「ツボというのはいわば、経験則の集積。“ここを刺激したら肩こりがほぐれた”といった昔の人の経験が数千年の間に集積され、今日に伝えられたものと私は考えています。科学的な根拠が解明されていないとしても軽んずべからず、といったところでしょうか」
なお須田先生によれば、風邪の治療の最前線では昨今、漢方の知識が再評価されているという。漢方が教える薬草には、科学的に有効な成分がたくさん含まれており、近代医学に通ずるためだ。
経絡秘孔はフィクションだとしても、経絡やツボの概念は、あながち迷信とは言い切れない。いずれそのメカニズムが解明される日が来るかも!?