2011年2月19日土曜日

シェアハウス若者招く 首都圏で多様化

シェアハウス若者招く 首都圏で多様化

2011/2/19 6:02

 それぞれが自分の部屋で暮らしながら、リビングなどを複数の住人で共有する「シェアハウス」と呼ばれる住居が首都圏で増えている。家賃の低さなど手軽さが人気の理由だったが、最近は他の入居者と交流できることにも注目が集まる。入居者も当初、主体だった外国人からさまざまな層に広がり、物件も多様化してきた。
 東京・四谷にあるシェアハウス「四谷ハウス」には留学生を中心に約30人が生活している。食堂や台所、トイレなどが共用で、家賃は個室が8平方メートルの場合、月7万円程度。しかも保証人が不要で、運営する投資会社のエクセ(東京・千代田)の緒方俊介氏は「留学生には大きな利点」と強調する。入居するスウェーデン人留学生のメランデルさんは「東京の中心にあり、移動に便利」と話す。
 シェアハウスの情報サイトを運営するひつじインキュベーション・スクエア(東京・渋谷)によると、現在の掲載物件は769棟。この1年間で45%増えた。ほとんどが首都圏に集中している。当初は主に外国人を対象にしたため、東京周辺に多いといわれる。
 物件の増加に伴い、窓のないものや極端に狭いものなども増えているとみられ、注意が必要だ。一方で、さまざまな形態が誕生している。
 約22平方メートルの部屋には台所や風呂、トイレがそろう。JR浦和駅から徒歩10分ほどのところにある「J&Fハウス浦和」は一見、普通のアパートだ。違うのは1階に共用の居間があり、大型テレビやソファが置かれている点。運営会社のジャフプラザ(東京・新宿)は「プライバシーが尊重され、共同生活の良さも感じられるため、ほぼ満室が続いている」という。
 J&Fハウス浦和では入居者の7割が外国人だが、日本人が中心の物件も増えている。
 昨年7月に開業した神奈川県厚木市の「シェアハウスK光ケ丘」。入居しているのは全員が日本人女性だ。管理人が常駐していることも人気の理由のようだ。
 「みんなでおしゃべりしたい時は1階リビングで、1人になりたいときは自分の部屋に行けばいい」。徳島県出身の22歳の保育補助員はこう話す。ソフトボールチームの仲間と近くのマンションに同居していたが、一緒に引っ越してきた。
 建設会社の小島組(厚木市)が自動車部品会社の独身寮を購入して改修した。「首都圏に来て孤独を感じる人が厚木周辺でも増える」と新事業として始めた。
 近隣住民にも配慮している。屋上を開放し、交流会も開催する。「誰が住んでいるかわかる安心感を近隣に与えるとともに、入居者が地域の人とコミュニティーを形成できる」(小島組)。
 さらには、こんな物件も出てきた。
 千葉県旭市のJR飯岡駅から車で約20分。太平洋を望む田園地帯にガラス張りの家がたたずむ。特定非営利活動法人(NPO法人)ミレニアムシティが開設した「あさひミレニアムシティ」だ。
 地元の人が驚いたという建物は、ガラス温室の使用済みの部材や古いしょうゆ蔵の梁(はり)を活用。太陽光を採り入れて消費電力を抑えている。敷地内には無肥料、無農薬の畑を備える。
 建物にはリビング、台所などの共同スペースのほか、2戸の定住用住居と、契約者が好きな時に使うことのできる7.5平方メートルの7部屋がある。すでにいっぱいで、利用者は研究者、経営者、勤め人など様々。年齢も30歳代から70歳代まで幅広い。「多くの人は都心に生活の軸足を置きながら、週末に共同で野菜などを作り、半自給自足の生活を楽しんでいる」(井口浩理事長)。
 埼玉県から家族で定住用住居に移り住んだ40歳代の女性は「自然に触れる暮らしのなかで、息子の体も丈夫になった」と喜ぶ。同法人は同じ土地に2棟目を計画中だ。