中小企業向け金融の「公的依存度」が高まっている。中小向け貸出金に占める政府系金融機関や政府保証付きの割合は約24%と全体の4分の1に迫っており、1割強の米国を大幅に上回る。2008年秋のリーマン・ショックを受けた政府の資金繰り支援で公的依存が定着し、金融危機が一巡した後も貸出残高は高水準にある。融資先を開拓せずに余剰資金を国債運用に回すなど、民間金融機関の機能低下も深刻になっている。
銀行や信用金庫、信用組合といった民間金融機関に政府系の日本政策金融公庫、商工組合中央金庫を加えた中小企業向け貸出残高は10年9月末で約252兆円となる。このうち政府系金融機関の貸出金が約26兆円。残る民間分も、実質的な政府保証である信用保証協会の保証制度の利用が約35兆円にのぼる。これらを合計すると約61兆円、全体の24%分が公的部門に頼った融資といえる。
銀行や信用金庫、信用組合といった民間金融機関に政府系の日本政策金融公庫、商工組合中央金庫を加えた中小企業向け貸出残高は10年9月末で約252兆円となる。このうち政府系金融機関の貸出金が約26兆円。残る民間分も、実質的な政府保証である信用保証協会の保証制度の利用が約35兆円にのぼる。これらを合計すると約61兆円、全体の24%分が公的部門に頼った融資といえる。
金融危機の直後の08年9月末の公的依存度は約21%で、2年間に約3ポイント上昇した。保証付きを除く民間の貸出残高が6兆円以上減るなか、公的部門の残高は約7兆円増えており、公的部門が民間分を肩代わりした構図が浮き彫りになる。
中小向けの公的依存が進んだのは、政府が金融危機対応で導入した緊急保証制度やセーフティーネット貸付枠がきっかけだ。11年2月中旬までの緊急保証の実績は約140万件(約25兆円)。日本公庫と商工中金のセーフティーネット貸付は約65万件(約14兆円)に上る。日本公庫の貸出基準金利は年2.25~3.05%。民間金融機関に比べて割安といえ、新規融資額は四半期で1兆円超のペースで増えている。
公的融資の拡大が金融危機に見舞われた中小企業の資金繰りを支えたのは事実だが、それによって構造不振の中小企業までもが救済され、産業の新陳代謝が進まなくなる可能性はある。また政府保証付き融資の対象企業が破綻すれば、最終的に損失処理が国民負担になる恐れもある。
日本の公的頼みは国際的にみても突出している。日本と同じように中小企業向けの金融支援を実施した米国では、公的依存度は09年9月末で12%台。その後も大きくは変わっておらず、日本の半分程度にとどまる。みずほ総合研究所の西川珠子主任研究員は「米国では中小企業が借り入れを手控えており、日本ほど公的部門への依存は進んでいない」と話す。