近江商人 の考え方 1.「三方よし」
1.「三方よし」
これは、「売手よし、買手よし、世間によし」のことを言い表したものです。
商売を行うからには儲からねば意味がありません、
そのためにはお客さんにも喜んでもらわなければなりません。
ですから「売手よし、買手よし」は当然のことといえますが、
近江商人には、このうえに「世間よし」が加わって「三方よし」となります。
これは300年生き続けてきた理念で、近江商人特有のものとなっています。
自らの地盤を遠く離れた他国で商売を行う、近江商人においては、
他国において尊重されるということが、自らの存在を正当づける根拠にもなりますから、
「世間によし」という理念が生まれてきたといわれています。
2.「利真於勤」
「利ハ勤ルニ於イテ真ナリ」これは、「三方よし」が近江商人の存在理由であるとするなら、
その任務は物資の流通にあると定めたもので、利益はその任務に懸命に努力したことに対する
おこぼれに過ぎないという理念を言い表したものです。
これは営利至上主義に陥ることを諫めたもので、経営の社会的責任というものを強調したものといえます。
西洋社会においては、キリスト教のプロテスタントの精神から、
交換経済は人間に不可欠なものであるから、
その機能を促進させる商人は、「神の意志」に即した行為を行うものである、
このように宗教的理念から商人の存在が正当づけられているのに対して、
近江商人においては、特定の宗教というより、天下の需要と供給を調整するのが商人として天職、
商人に課せられた社会的責任であるとの考え方で、これを完全に達成するために勤めるのであり、
利益が目的で勤めるのではなく、利益は商人が責任を果たしたことについて添えられる潤いというべき
ものとする、近江商人独特の職業観、職業倫理であったといえます。
3.「陰徳善事」
これは人知れずよい行いを行うことであり、自己顕示や見返りを期待せず、人のために尽くしなさいという
意味です。
人間の能力には限界があり、自分の努力だけではどうしようもないこともあり、そこから先は神仏などの
「絶対者」に帰依するよりほかはないという、近江商人の宗教観を表したものといえます。